ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
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えみるにやっかまれながら、ありあは花嫁の兄にLINEのIDを手渡した。
ありあは、男を退屈させない術を心得ている。新体制が男向けの風俗店を取り壊した以前、客の指名は絶えなかったし、ありあの容姿や接客は、業界内でも評判だった。
従って、しょっちゅう地下アイドルや駆け出し中の芸能人かと誤解を招いて写真をせがまれる妹を持つ往国英治の女を見る目が肥えていても、ありあには、彼と個人的に会うところまで持ち込める想像が出来た。しかも昨今の風潮から、彼が異性愛者であれば、女の好意は喉から手が出るほどには欲しいはずだ。
ありあの見通しは的を得た。
披露宴であれほど泣き腫らしていた男は、一同が二次会会場に移る頃にもなると、ありあが手帳の切れ端に記した連絡先を活用した。
かくてありあは、久しく恋愛の楽しみを得た。
明くる朝、通勤の足どりも軽やかだった。収容所に到着して、昨日の祝宴がお開きになったあとも英治とLINEで自己紹介を送り合っていたことを惚気るありあを、えみるが恨めしそうに睨む。