ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
「私に言わないで、えみるんも少し勇気を出せば良いのよ。伊藤さんは古い党の代表だから難しくても、織葉さんならデートにくらい誘えるでしょ。愛津ちゃんなんて、織葉さんとも神倉さんとも出かけたんだし」
「誘える口実もないのに?万が一、ドキドキしてる……なんて気付かれたら、顔見れなくなる、気軽に事務所に行けなくなる」
「小学生じゃないんだし、それくらいで気まずくならないってば。だいたい織葉さんは浮いた話も聞かないし、案外、そういう人は先着順でオーケーしてくれたりするよ」
「ありあちゃんの経験談は、参考にならない。相手が男の場合でしょ。扱いやすいよね。男なんて、ヤらせたら恋人にしてくれる生き物でしょ。それに引き換え織葉さんは、思慮深くて理性的で聡明で、私は土下座したってなりたい関係になれない……」
「木之内さんを襲った時は強気だったえみるんが、どうしたの」
「あれは私が優位だったし、仕事モードだったから……」
ありあとて、それは理解出来なくもない。
昨日が何かしらの業務であれば、その場に首尾されていた英治に対して、連絡先の交換から始めようとは考えなかった。もっと直接的に、大胆に接触しただろう。
月村が出勤してくると、看守達は朝礼を始めた。諸連絡を終えて、各持ち場につく。
ありあも指示を受けた独房へ向かう。すると先週まで無人だったそこに、まだ衰弱していない若い男が入っていた。
斎藤こうき。
書類を見ると、居酒屋経営者と記されていた。彼の罪は婚約破棄。つまり相手の女を蔑ろにしたとして、娑婆を追放されたらしい。