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ジェンダー・ギャップ革命

第5章 良人の娘と寝る女


* * * * * *

 ハネムーンから戻った英真達は、おそらく精神的なもののもたらす疲労感に打ちのめされていた。

 現地での写真を見る限り、旅の空は晴れていたようだ。ただ、二人が陽気に振る舞おうと努めるほど、愛津は釈然としない何かを覚える。

 年末年始の催し物の確認や、メールの返信。市が主催した絵葉書コンテストの応募者リストの作成や、予算の見直し、施設の出の赤ん坊らの里親探し。…………

 それらの業務を振り分けて、愛津達はデスクに向かった。英真も精彩に欠けた以外、的確に仕事を進める片手間にしづやを観賞している姿は、いつもの彼女だ。



 昼の休憩時間になった。

 愛津は新婚の同僚達が──…特に英真が本調子でない所以を知った。


「斎藤さんが収容所に送られた件、神倉さんはご存じですか」


 弁当箱を広げながら、世間話でも始める調子で、英真がえれんに切り出した。

 聞けば禍根は、既に結婚式の日には、二人に忍び寄っていた。
 英真達の友人が婚姻届を提出した相手の男、斎藤こうきの突然の逮捕。彼を通報したのが英真達ではと疑った百目鬼は、二人の送った結婚式の招待状に返事も寄越さなかったという。英真はあらゆる手段を使って、親友に連絡を試みた。が、家に押しかけでもしなければ、彼女は英真に取り合うまい。その百目鬼はしづやにとっても恩人で、彼女の破談、そして誤解は、二人を揃って苦悩させた。

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