ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
えれんは人目につかない場所を求めた泰子に付いて、階下に降りた。
外では虹色の団員達が、旗やプラカードを掲げている。レズビアンらしき女達が減ったのは、昨今、女と女の愛情こそが一般化したからだろう。何せ男は就職難で、低所得者でも女以上に納税して、罪を犯せば赤子を産む家畜になる。
すぐ目先にいる女達は、異性愛の権利を訴えていた。
「少し、やりすぎじゃないかしら」
「それは女性達が男を愛する権利を訴えなければいけなくなるほど、私の政策が異性愛者の居場所を奪ったという意味で?」
「いいえ、えれんの意図したことではなかったでしょう。貴女の政治団体は、セクシャルについて一切触れたことがなかった」
「一方を真っ当と認識すれば、対極を異常と見なしたがる。私からすれば真っ当も異常もないけれど、人間は数でものを見たがる生き物なのよね」
「多数決に勝ちさえすれば、非人道的なことも正当化される。今の少子化対策を肯定した決定打だわ」
「人工出産が非人道的だと言うの?」
「収容所もね。英真ちゃんの友達の婚約者を通報したの、えれんでしょ?」
泰子から、非難の含意は感じない。
えれんが斎藤を収容所に送ったのは事実だ。磯部が彼女に話したのだろう。公安最上位にいる彼女の計らいがあってこそ、「清愛の輪」はあの施設に関わる権利を所有している。しかし彼女は口が軽い。