ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
父親は寝室にいた。
突き当りに位置するここの襖を開けてまで、彼に入る用事はない。しかし愛津があとに回したこの部屋こそ、彼の探し物は捗ったのだ。
父親は、愛津の銀行通帳を開いて見ていた。
「これは……ボーナスか?明細は?」
「何で、そんなの見てるの?」
「それはお前、給料どれだけ良くなったか知っておかなくちゃダメだろう。少しでも仕送りが増えたら助かるって、お母さんとも話しててな」
「いくら増えたら助かるの」
「多い方が良いに決まってるだろ。ここ、家賃はいくらだ?愛津が満足に暮らせるくらいは残してやるから、毎月かつかつのお父さん達に……な?」
「良い加減にしてよ」
「……へ?」
「私に会いに来たんじゃないの?話に来たんじゃないの?そういう話をしたかったの?!」
愛津は、銀行通帳を引ったくった。散らかされたタオルや下着を箪笥に戻して、コスメも戸棚に片付けていく。バッグから財布も飛び出していた。小銭入れのスナップが外れていたのに気付かず掴むと、中身を蒔いた。手早く硬貨をかき集めて、バッグに仕舞う。スマートフォンが見当たらなかった。