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ジェンダー・ギャップ革命

第5章 良人の娘と寝る女


* * * * * *

 二十代を終える頃、えれんは男を一人残らず抹殺しようと思い至った。

 初めは自分が死ぬつもりだった。しかし雲を掴むような希望に縋っている内に、親友の訃報を受けて、死ぬのをやめた。


 彼氏はいないのか、好きな男は。

 花盛りの女と会話する時、旧時代的な年長者達は、そうした話題を選びたがる。たまにえれんが顔を合わせる血縁者達も、嫁入りが楽しみだの男好きのする別嬪だの言って、おだてたつもりになっていた。

 若い女への常套句は、凶器になる。

 鮮やかな真紅を広げた湯船に手首を浸けていたのを発見されたという親友も、過剰な結婚ハラスメントの犠牲者だった。

 
 えれんと夫婦関係になった大越は、その頃、既に謙虚な若者から男性優位主義の盲信者に変貌していた。

 彼の金は再就職先の見つからなかったえれんを食い繋がせたし、市役所勤務の男の交友関係は、のちにえれんの強みになった。

 だが彼は、月給を預ければ無限に仕事をこなす家政婦を必要としていただけだった。そしてどう扱っても合法な情婦。

 大越がえれんを怒鳴ったことはなかった。まして理不尽な粗探しに打ち込むような男でもなかった。配偶者としてえれんを尊重していて、結婚生活は円満だった。ただ、えれんは彼が男である時点で何のときめきも覚えなかったし、彼の旧時代的思考は、他の女でも耐え難かったろう。

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