ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
織葉が愛津を追いかけたあと、えれんは研究所を訪ねた。
久城の研究が成功して、一年余りが過ぎた。今秋は新たな命が幾多産まれた。新生児達は健康で、育て親も足りている。年末年始も仕事にかかりきりになる、と彼女達が話していたのを思い出して、えれんは今後の出生予定を確認しておくことにしたのだ。
深夜帯でも施設内は明るく、研究員達が忙しなく動き回っていた。
用を済ませてえれんが来た道を引き返していると、男の悲鳴が鉄扉を突き抜けてきた。
「フギーーー!!帰せ!!ヒギィィィイイイ!!!」
均等に並んだ鉄扉は、どれも妊夫達の個室だ。
咎人として収容所にいる女達から採取された卵子を腹に入れた男達は、多くが精神を壊す。彼らが自ら命を絶たないよう監視して、健康管理や胎児の成長を観察するため、彼らをここに予定日まで禁足している。
今しがたの個室から、白衣を着た女が出てきた。鎮静剤を打ったのか、男の声はもう聞こえない。
「あ、神倉さん。お疲れさ──…
「えれんちゃんか?!!」
「大越!!」
白衣の女が血相を変えた。這い出てきた患者衣姿の男を押さえつけて、大きな腹に気を付けながら、彼を中へ戻そうと踏ん張っている。