ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
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残った夕飯を温め直して、愛津は織葉に食事を勧めた。
彼女の向かい側に座って、愛津もデザートのカップスイーツにスプーンを沈める。
氷のような美人だ、と織葉を評価する人間は少なくない。
冷涼な印象の先立つ目元は切れ長で、線の細い輪郭は、完璧と言える顔の造形をより引き立てて、確かに、隙のないがゆえの近づきにくさがあるかも知れない。だが直視するだけで愛津の胸を逸らせる双眸は明るく、よく動く表情は彼女の気性を滲ませている。儚げでありながら圧倒的な存在感、タートルネックのカットソーにジーンズという装いは、却って彼女の華のみならず品格まで強調して、化粧も垢抜けている。そう言えば、趣味はコスメだと聞いたことがある。
さっき愛津も腹に入れた即興料理は、口に運んでいるのが織葉というだけで、急に極上の品々に思えてくる。
「どうかした?」
「いいえっ」
「なんだ、見惚れてくれたんだと思ったのに」
「えっ」
「愛津ちゃんのこと、私は可愛いと思ってる。けど、愛津ちゃんは理想高そうだし、片想いだよね」
「それは、その……」
「ご馳走様。お皿洗わせてもらうね、蛇口ここ?」
愛津が織葉を止めるより先に、彼女が流し台へ向かった。
彼女に皿洗いなどさせられない。
追いかけたのに、結局、二人並んでの共同作業に落ち着いた。