ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
研究施設を訪ねた義母とLINEで話している内に、眠っていた。
えれんの大越を罵る文面は、織葉にこれといった感情ももたらさなかった。夢にまで見た愛津との時間が、赤の他人も同然の男の話題が妨げてきただけだった。
愛津は掴みどころがない。
そこいらの女達に通じるような顔を見せることもあれば、生真面目で無垢な少女にもなる。実際、彼女は後者だろう。恋愛絡みの話も噂も聞いたことがない。
織葉が目を覚ました時、愛津はまだ眠っていた。
微かに上下する布団の膨らみを見下ろしながら、何をしているのか、と我ながら思う。
彼女に抱かれた羽毛にうもれた寝顔を想像して、それが安らかであるよう願っただけだと、誰に対してでもなく理屈付けする。
二年前、勉強のためと言ってえれんに接触した愛津に、織葉は久しく焦燥に近いものを感じた。
彼女ががむしゃらに生きてこなければいけなかったのは、彼女の背負った重みのようなものから察したし、事情が何であれ、消極的になるどころか未来を見限らない強さも備えた彼女に惹かれた。そして彼女の、生真面目で正直な内面に魅せられていったのだと思う。
いつどこからが恋だったかは、思い出せない。
彼女を繋ぎとめたくて仕方なくなった今となっては、どんな理屈も事実も美化になる。
「愛津ちゃん」
好き。愛してる。
目を覚ましている時、彼女に伝えられれば、胸のつかえも取れるだろうか。持て余してきた感情が、あまりに溜まって、苦しい。