ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
多くの賛同を得さえすれば、たとえ不条理な物事も、正当になる。
いつかのえれんの話の通り、年が明けて、女が男を通報するケースが増えた。
数年前まで耐えてこそ美徳としていた彼女達は、今やカフェの店員が注文内容を誤っただけで、公的機関に訴え出る。
男を同じ人間と見なすのは時代遅れで、事実、彼らは筋肉が発達した代わりに知能が低く、過失を許せばとんでもないことになる。そうした認識が広がった今、彼女らにとって男達を収容所へ送ることは、徳を積む行為にさえ相当するのだ。
従って、えみる達の仕事は右上がりに増えていた。
今日の花見も常勤全員の参加は叶わず、収容所と研究施設には、今も多数の職員達が在駐している。
「久城さぁぁんっ、会えて良かったですぅ」
「大袈裟ね、えみるちゃん。昨日も会ったじゃない」
「オスの受け渡しは、会った内に入りません。施設内だと、久城さんが一番心配ですよ。夜もあまり眠れていないみたいですし」
「妊夫に何かあったら大損害だもの。監視カメラから目を離せないの。でも科学は私の生き甲斐で、残業代はたっぷりもらっているから、この通り元気よ」
「さすが!」
「あの、大越さん……って?」
ありあが会話に割り込んできた。さっきは英真の兄との惚気話に表情筋を失くしていたのに、打って変わって緊張した顔つきだ。