ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
「大越さんは、収容所に来た時、とっくに心が壊れていました。拷問の手ごたえがありませんでした。ある時は、こんなにノリノリでペニスを扱かれたのは初めてだって、泣いて喜んでいましたし……」
「そういう風に同情を誘って、大越はありあちゃんに助けてもらいたかったんだよ」
「そうかな?あんなに口下手で不器用な人が、そんな姑息なこと出来るかな。神倉さんと織葉さんとも、ちゃんと話そうと、何度も心を決められていたそうです。でもそんな日に限って上司に怒鳴られたり、同僚に残業を押しつけられたり、後輩に馬鹿にされたり、新人のミスをフォローしたり、用務員さんの階段掃除を代わったりして、疲れきって帰宅していたそうです。よく神倉さんに辛く当たってしまった、と、思い出して泣いてたわ」
「会ったことないから何とも言えないけど、当たってた自覚はあったんだ?」
「出来た。どうかな?このあと宴会芸で着るの」
花見もしないで黙々と縫い物を進めていた月村が、急に顔を上げた。彼女の膝にはデコレーションしたセーラー服が広げてあった。
そういえば最近、収容所の所長室から、彼女らしからぬ彼女の声や、通常の業務をしているだけなら立たないような物音が聴こえてくることがあった。