ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
「そうだ、月村さんは男の配偶者がいらっしゃるんですよね?どんな感じですか?」
「収容所勤めの私を、いつも気遣ってくれる人。朝は私よりうんと早く起きて、洗濯や娘の世話をしてくれる。帰ってきてもニコニコしていて、一日のことを話してくれる。彼だって暇じゃないのに……職場では慕われているみたいだし、仕事を教えるのが丁寧だって、前に小耳に挟んだわ。今日も日曜参観があって、自分が行くから君はお花見を楽しんで来いと私に……ダメ、これじゃあ英治くんのことで惚気るありあちゃんと同じね、止まらない」
とてもあの施設の責任者とは思い難い表情で、月村が家族自慢を中断した。
そうだ。
ここのシートで花見弁当を広げている顔触れは、ほとんどが過酷な連勤明けで、いつ振りかの休息を貪っている。
穏やかな空に鮮やかなピンク。甘辛い香り。
こうも爽やかな、生まれ変わった気分にさえなれるような場所にいて、えみる達の話題の中心は、仕事だ。…………
手付かずだったちらし寿司を紙皿によそう月村の肩越しに、歓談するえれん達が見えた。
相変わらず美人母娘に気に入られているらしい愛津は、彼女らに髪や洋服を撫でられて、照れ臭そうに笑っている。英真としづやにお茶を注いでいるのは、家政婦の佐々木だ。シルバーピンクのミディアムヘアは、一度見れば人違いしにくい。