ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
「織葉さん、花より綺麗……」
「告白しないの?」
「出来ないです。これでも豆腐ですから」
「えみるん、仕事は積極的なのに、プライベートは本当にヘタレ」
「ありあちゃんには分からないよぉ、敵の多すぎる片想いがどんなに過酷か……」
好意だけで恋が成就するなら、この世の辞書に失恋という単語は載らなかった。織葉の演説に初めて遭遇した時から、えみるは彼女に惹かれていた。その引力は、きっと愛津が彼女に引き寄せられた時より強い。
彼女の好意は、えれんか愛津、どちらに重心をかけているのか。
明白なのは愛津だが、大越が投獄されてから、いよいよ誰にも気を遣わないで、あの母娘も二人の生活を満悦しているように思う。
「神倉さんの線はないと思うよ」
読心術を使ったかのようなタイミングで、ありあがえみるに話を振った。
「だって大越さん、織葉さんは実の娘だって言ってたし」
「はっ?!」
えみるの拳の内側に、爪が食い込んだ。辛うじて暴力に訴え出そうになったのを、止めた。
大越はまだ施設にいる。身体の方が、まだ人工出産の器として使えるらしい。
死刑になるべきだと思った。彼の発言がありあの記憶違いでなければ、侮辱罪だ。
よりによって、織葉が咎人の──…それも家畜に成り下がった男の血を引いているはずがない。