ジェンダー・ギャップ革命
第5章 良人の娘と寝る女
ガーランドライトが丘の麓の桜の木々を照らし出すと、花見会は解散予定時刻を迎えた。
片付けを終えたあとは、帰るも残るも各自の自由だ。
愛津は織葉の荷物持ちを手伝って、彼女と広場を散策することになった。
今しがたまでいた場所とは違って、花見客の最も集中するここら一帯は、この時間、花と光の海の中にいるようだ。
儚く可憐な薄紅の花は揃いのフリルで装って、一斉に咲き乱れている。蛍火のように小さな光の集合体が、その夜桜を幻想的に色づける。ガーランドライトはただ点灯しているだけでなく、色を変えたり点滅したり、何通りもの一枚絵を描いていた。
「綺麗……」
「ねー。皆、帰ってなさそう」
「その内ばったり会うかもですね」
少なくともえれんと泰子は真智に誘いのLINEを送っていたし、英真達も佐々木に荷物を預けていた。
今のところ愛津達の周りにいるのは、カップルか二人連れの友人同士ばかりだ。彼女達の関係性におよそ見分けがつくのは、日が暮れて昼間より解放的になったと見られる距離感からだ。
愛津の腰に、ぞくりとするほど心地好い抱擁が絡みついてきた。
これでは、愛津達もカップルと大差なくなる。…………
「愛津ちゃん、荷物貸して」
「今で半分ずつじゃないですか」
「こっちにあると、くっつけないから」
「えっと、じゃあこっちに移して片手で持ちます」
「腕、千切れちゃうって。そんな細腕でそういうこと言わないの」
言い終えるまでに、織葉が愛津の提げていた紙袋を取り上げた。明日には事務所の倉庫に戻されて、また一年、次の花見まで眠りに就くレジャーシートや折り畳み式テント。