ジェンダー・ギャップ革命
第1章 逆襲の女と家畜の男
意見は様々あるとしても、えみるはえれんを慕っている。大学在学中から彼女を支持して、投稿型動画SNSでも「清愛の輪」を広まるよう働きかけてきたが、あの頃より今が断然、生きやすい。女尊男卑の影響で、異性愛者の風当たりが強くなったのは、事実だ。収容所に送られなくても、職場や学校で嫌がらせを受けたりして、女まで迫害されるケースもある。えみるには関係のないことだ。海の向こうには同性愛が処罰される国もあるし、過去には動物にまで適用された例もある。その迫害の対象が、ここでは彼らというだけだ。
「そろそろ帰ろうか。今なら私が鍵かける」
「有り難うございます」
「えみるちゃんが来て、もう五年。早いなぁ、あの頃は大学生だったのに。織葉(おるは)にひと目惚れして来てくれて、ここに出入りするようになったよね。昨日のことのよう。看板娘に演説頼むと、人材集めも捗った」
「えっと……まぁ、はい。あの、でも原稿を書いたのは神倉さんですし。神倉さん推してますよ。そうだ、たまには夕飯でもご一緒しません?」
「悪い、ご飯は今度ね。家に宿題残してるから」
「えーっ、帰ってまでお仕事ですか?お疲れ様ですぅ」