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ジェンダー・ギャップ革命

第6章 異性愛者差別



「そのメンヘラ女のために、お義母様が散財する羽目になっちゃって」

「面倒事は避けてるだけよ。私が試着室で電話していて、順番待ちの客に迷惑をかけた──…なんて、秋の選挙で揚げ足の材料になるくらいなら」

「そっか、もうすぐなんだ」


 四年前、えれんは為政者としての立場を固めた。彼女の人柄、人脈は、彼女に理想郷への近道まで拓かせた。

 彼女が見通していたように、離婚率は大幅に下がり、女が暴力に遭う事件や性被害も格段に減った。バッグくらい誰でも予算と相談しないで新調出来る社会作りが必要ね、と呟く彼女の脳裏には、さっきの女達の姿も焼きついたのだろう。





 このえれんを、織葉はいつまで母親として認識していたか。

 織葉が物心ついた頃、ひ弱で繊細な女がいつも側にいた。外で見る母親達に比べて、えれんが破格に傷つきやすく危なっかしかった反面、群抜いて美しかったのは、幼心ながら印象的だった。
 彼女が織葉に注いだ愛情は、世間に見られがちな母性的なものとは違っていたし、事情あって離れざるを得なかったという実の母親と顔を合わせるようになってからは、輪をかけて彼女を肉親として見られなくなった。

 戸籍上の父親は、えれんと織葉に無関心だった。ただ、その男は同じ屋根の下にいて、えれんは滅多に家にいない男の下着や寝具を干して、爪の間を土だらけにして庭の雑草をむしりながら、悲観していた。

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