ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
「こんな感じかな?SNSくらいした方が良いのかなぁ」
「上手い。愛津ちゃんが始めたら、私も閲覧垢作るよ」
「でも、何すれば良いんだろ」
「コーデにご飯に……愛津ちゃんなら、ネタ尽きないって。土曜のパフェもすごかったよね」
えれんが織葉に、例の金魚鉢パフェを写真で見せたのだろう。
あの時も写真に撮っていた。えれんを支持してからというもの、愛津のデータフォルダは一気に充実していった。
織葉に続いて、愛津も目の前に並んだ宝石のようなスイーツに手を合わせると、ミルクフォームをこぼさないよう気をつけながら、苺ラテを啜った。それから、赤いマーブル模様のチーズケーキにフォークを突き刺す。
「美味しい!予約して大正解。甘いものは正義だなぁ」
「ねー、美味しい。フルーツは摘みたてみたいに新鮮で、バターも良い香り」
聴き心地の良い織葉の声が、愛津の胸の奥底にきらきらと落ちて、満たしていく。
数年前は、仕事を上がって就寝までの間は、体力や金を最小限に抑えて過ごすことだけ考えていた。こうも幸福な夜などは、空想の中でごく稀に思い描いていたくらいだ。
織葉と出逢ってから楽しい。あの演説を通りかかった偶然が、愛津の生き方を変えた。