ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
「愛津ちゃんの夢を手伝ってくれた彼女には、感謝しかない」
「私も」
「長い時も、可愛かったけどね」
織葉の指が、愛津の頬近くの髪をとかした。
ソファ席に雰囲気ある明暗を生む照明も、織葉をより神秘的に見せる要素だ。明るさと物憂げとがひとところにある清冽な目が、どこか切なげに愛津を映していた。
「不倫って、やっちゃいけないものだから、やりたくなるんだったりして」
「え?」
「社内恋愛もそうじゃない?スリルを楽しんでるパターンだって、なきにしもあらず。昔いた会社にも、愛人の噂の絶えない幹部いたんだ」
織葉の話は、唐突だった。
愛津の頭は追いつかない。そのくせ彼女の話には、思い当たる節がある。
「好きになったら、相手に迷惑かける。誰かや自分が傷つく。好意を貫いたって、期待出来る未来はない。だから気持ちを抑えたくて、でも抑えられないどうしようもなさは、私にも分かる」
「…………」
「何もかも自由だったとして、周りに祝福されるなら、却って欲しくもならなかったか。想像したら、私の場合はそうじゃない。全然違う。スリルはいらない。幸せが欲しい」