ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
おどけた言葉つきにぼかしたのは、本心だ。
春にも織葉と好意を交わした。愛津は当たり障りのない言葉を選んで、彼女も当たり障りなく、親しみを寄せてくれた。
あの時どこまでが真意だったか、愛津はもっと探りたい。
「まだ、時間ある?」
織葉が愛津の隣に場所を移した。彼女の指が、愛津のそれに絡みつく。
淡い光を受けた綺麗な顔と目が合った。目が合って、顔と顔との距離が近づく。
「時間、ある。いくらでも、……」
織葉の片手が愛津の腕をやんわり押さえた。絡めた指をじゃれつかせたまま、愛津は何かに操られるようにして、目蓋を下ろす。そうすることが運命づけられてでもいた風に、呼吸を止める。
「ん、……」
永遠にも思える口づけが、愛津を一瞬の中に囚えた。
きっと線香花火より短いそれに、愛津は泣きそうになる。織葉の唇が離れていっても、この想いに限りはない。
二人、どちらからともなくスマートフォンを出して、今夜の移動先を検索した。
第6章 異性愛差別──完──