ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
夜景の楽しめる場所を訊くために、愛津達が英真にLINEすると、彼女の所持している別邸の地図が、トークルームに送られてきた。ダイヤルロック式のキーボックスは、知らされた暗証番号で難なく開いたが、普段はカルチャースクールの開講場所でもある建物は、二階から住宅街が見下ろせるだけだ。
ビジネスホテルとでも思って使ってくれ、という英真の厚意に感謝のメッセージを返しながら、予期しなかったロケーションに、愛津はいよいよ落ち着かなくなる。
「夜景だけど……間違ってはいないけどぉっ……」
「私は好き。星も綺麗に見えて」
「あ、それは分かる!街だと明るくて、あんなに見えないもん」
愛津は織葉と肩を並べて、フェンスに半身を預けていた。
街灯と家々の窓の明かり、夜の帷に明滅する夏の星座に、雲に光を滲ませた月。想像していた眺めではないが、愛津も織葉も、きっとこうした場所を求めていたのだ。二人きりになれる場所。何かしらの名目を付けて、朝まで一緒にいられる場所。
キッチンには飲み物や軽食が常備されていて、クローゼットには着替えが数着入っていた。そして浴室には、アメニティ一式。
風呂には愛津が先に入った。続いて入れ違いに織葉が浴室へ向かうと、愛津は髪を乾かして、さっきのベランダへ戻った。軽い口当たりのアイスティーで喉を潤わせながらの天体観測は、ビジネスホテルではなかなか出来ない。