ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
真夏の夜風が心地良い。いびつな真珠に似た月が、いつにも増して眩しいのは、夢にまで見た織葉と二人きりの外泊だからだ。
「お待たせ、愛津ちゃん」
扉の開く音に続いて、玲瓏なメゾが愛津の耳に扇情的な呼び水をかけた。急いで髪を乾かしたのだろう、青みがかった形状記憶の癖毛が少し乱れているのが、化粧を落とした織葉を却って誘惑的に引き立てている。さっきクローゼットから選んだ英真のシフォン生地の部屋着が、生来やんごとなき生まれ育ちの彼女の気品によく合っている。
「大丈夫。織葉さん、髪長いから乾かすの大変そうだもんね」
「あんまり見ないで、ぼさってるから……」
「綺麗だから問題ないよ。私なんか適当だもん」
「可愛いよ。褒めるとこしかない」
アイスティーを飲み干して、愛津はテーブルにグラスを置いた。自由になった両手を織葉に伸ばして、彼女の両手を捕まえる。
愛津達は寝室に移って、やはり友人同士らしからぬ気分に導かれていった。愛津は織葉に今日二度目のキスをねだって、目を開けたまま寝言でも呟く調子で、ありのままの本心を告げた。
「好き……織葉さんが、ずっと好き……」