ジェンダー・ギャップ革命
第2章 唾を吐く貧民
にわかにえれんが話に割り込んできた。今しがたまで仕事に集中していた彼女は、愛津達の無駄話など耳に入っていない様子だったのに。
「神倉さんー。長沼さん、収容所に送れませんか?気が散って業務妨害です」
「男でも、議員や著名人、公務員は、なかなかあすこに送れないのよ。長沼も高齢の市民達に人気でしょう。送ってしまうと、私達に反感の目が向けられてくるリスクも」
「……ですよねぇ。あ、資料完成しました。コピーしてファイルしておきます」
「有り難う。ついでに電子データの方、久城さんにメールお願い」
「分かりました」
結局、長沼の街頭演説は、昼近くまで続いた。
彼は元々、えれんとはそりの合わない往国英治を尊敬していた。彼女が当選して以来、彼個人は往国から独立して福祉に力を注ぐようになったとは言え、かつての感情は拭い難いのだろう。