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ジェンダー・ギャップ革命

第7章 愛慾という桎梏






 えみると何事もなく解散した翌朝、えれんは帰っていなかった。若松の家で酔い潰れていたらしい。そのメッセージに気が付いたのは、事務所で彼女と顔を合わせたあとだ。

 愛津の身代わりになる、と言ったえみるの本心を聞かされた。織葉は彼女を止められなかった。


 今日は、定時まで瞬く間だった。

 愛津をあすこから出すための思案ばかりを頭に巡らせていた織葉は、えれんとの話に備えた整理は手付かずでいた。


 事務所を出て、織葉はえれんと盛り場へ向かった。

 ホテルに入って部屋を選んでチェックインして、近くで買い込んできた夕飯をテーブルに広げていく織葉の側で、えれんがフロントにドリンクを頼む。実用性に欠けた内装の室内とは不釣り合いの食卓が出来上がる頃、緑茶とレモネードが運ばれてきた。



 愛津に関する告白を、織葉は五分もかからず終えた。

 えれんを大切に想うと同時に、女として愛津を愛した。「清愛の輪」の理念に従うべき立場にいながら、彼女への想いがあまりに強く、側にいる限り抑えることは不可能だったという至極単純な事実しか、織葉は持ち合わせていない。

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