ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
「織葉を咎める気も、まして除名なんかしない。だって、私を愛する気持ちも変わらないんでしょう?」
「お義母様の志を支えたい。そういう意味での愛だよ、良いの?」
「十分よ。恋愛感情なんて独善的なもの、私には必要ないもの」
言葉つきに反して、えれんが織葉に向ける目には熱がこもっている。
えれんは孤独に打ちひしがれながら、甘く優しい感情には無欲だ。
かつて彼女を口説いて、自分本位に振る舞ってきた男達が、彼女に諦念を植えつけたのか。或いは織葉が愛津にその類の感情を向けて、彼女の拒絶反応に輪をかけたのか。
先にシャワーを浴びるかというえれんの問いに、織葉は首を横に振った。
魚介のキッシュの匂いを残した唇に、同じ味の染み込んでいるだろう自分のそれを重ねた織葉は、角度を変えて、彼女を愛撫のようなキスで愛でる。
ソファを離れて、えれんが寝台に腰を下ろした。
彼女が織葉に脱衣を命じた。
服従を固く誓った臣下を見下ろす女神のごとく眼差しの先で、事実、織葉は彼女に従う。肌に残るものが下着だけになった時、明かりの強さを意識した。ブラジャーの肩紐に指をかけて、織葉が躊躇っていると、早く見せて、と彼女の唇が動いた。
信仰深い臣下でさえ、一糸まとわぬ姿で女神に跪き、つま先に口づけるだろうか。
織葉はえれんの言葉があれば、口づけばかりか舌も伸ばす。