ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
項垂れた織葉の首筋をえれんの唇が触れて、耳朶を咥える。
「やめろ、とは言わないんだ」
「……お義母様の意思を否定するなんて、考えられ、ない」
「そうね。でも私だけを愛するのも、無理なんでしょう」
「…………」
織葉のえれんへ向ける感情は、物心ついた頃から変わっていない。変わってはいけない。
だのに心は、自由だ。残酷なまでに。
肉体は容易く不羈を手放せても、感情は、きっと命ごと摘まれなければ、どうにもならない。
「愛津ちゃんとは、もう二人きりにならない」
祈る思いで、織葉はえれんに視線を動かす。
「私がお義母様のものじゃなかったことなんか、ないよ。あの子を好き。幸せを願ってる。でもそれは、私の側でじゃなくて良いの」
初めは、それが本望だった。
えれんは数多の女達に希望を示して、彼女達のために動いたきた。織葉もそんな彼女の志を支持してきたし、数多の女達の中には当然、愛津も含む。だからこそ釈放するべきだ。
織葉の主張に、えれんは目に見えて迷った顔を見せた。
愛津を拘置しても織葉に孤独をぶつけても、物理ではどうにもならないことがある。
彼女も、きっとそれは分かっている。