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ジェンダー・ギャップ革命

第7章 愛慾という桎梏



「織葉さんへの気持ち、まだ諦めないで」

「有り難う、ありあちゃん」

「根拠があって、言ってるの。こんなことがあって、愛津ちゃんは今まで通りにいかないと思う。今の内に、えみるんが頑張る時だよ。それに織葉さん、神倉さんとは血縁あるから、色恋の噂はほぼデタラメ」

「まだそんなこと鵜呑みにしてたんだ」


 ありあも、一部のマイナーな噂を真に受けている。しかも彼女は、えれんの元配偶者から、それが事実と聞かされたという。

 大越湊斗。

 彼女から見た例の男とえれんの語る彼は、同一人物でありながら、百八十度の誤差がある。

 えみるには、どちらが正しいかなど関係ない。

 ただ不明瞭な事柄を詮索したがる人間の姿は、見苦しい。他人を信じやすいありあはともかく、あの母娘からどことなく同じ雰囲気を感じるだの、血縁があって肉親の間柄を超えていても気にしないだの、英真達のような第三者の野次馬根性は、傍観していて気分の良いものではない。

 えみるは、それだけ織葉を愛している。噂や好奇心に穢されず、美しい場所に凛然と存在していて欲しいほどには。







第7章 愛慾という桎梏──完──

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