ジェンダー・ギャップ革命
第8章 報復の権利
終息の見えない貧苦に喘いで日々をしのぐより、この二週間は長かった。
特に責め苦も強いられないで、詰問や説教も免れていた愛津は、職員らに日付を教えられながら、何とか暦を把握したまま、免罪通知を受け取った。
最低限、生命を繋げるよう設計された独房は、生臭さを含んだ生ぬるい風をどこからか呼び寄せて、不意に愛津をぞっとさせる。今も遠くに聞こえる物騒な声や物音は、外部とは完全に遮断された空間にいても、他人事とは割りきれない強迫観念、瘴気を生んで、愛津の気を滅入らせる。
「愛津ちゃんも知っている通り、ここは公安の許可があって、「清愛の輪」に権限が委ねられている。私情を挟んだ疑いが出ればあちらの信用が危うくなるし、他の政党や市民達に、あらぬ誤解や反感を持たせる危険もあった。だから随分、待ってもらってしまったけれど、明日の朝、神倉さんが迎えにくるわ」
「神倉さんが?」
「ご家族の方が、良かった?」
「……いいえ」
意味慎重な言葉つきから、愛津は、自分の家庭環境が月村の耳にも入っているのだと察した。
数時間後には出所するのだと分かった途端、胸の鉛が一気に落ちていくのを感じた。
心の負荷が減ったのは、半分だけだ。
自身の安否がはっきりした分、もう一方の気がかりが、愛津の中で本格的に浮き彫りになった。