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ジェンダー・ギャップ革命

第8章 報復の権利



「神倉さんは、私のこと、何か仰っていましたか」

「可愛い役員に取り返しのつかないことをしなくて良かった、と」

「そう、ですか」


 月村の顔が今ひとつ晴れていないのは、えみるの企てた計らいを、彼女は知らないからだろう。

 愛津は、研究施設に複数回、卵子を送られたことになっている。えみるの友情には驚きながらも、罰則の件は気にするなという彼女の厚意に甘えて、愛津はここにいる間、囚人服も脱いでいない。

 えみるに限らない。愛津は、月村とも良好な関係でいられた。えれんも愛津を許したのか、身元引き受けを買って出てくれた。

 愛津は彼女らと関わった分、織葉だけが、いっそう遠く離れていたように感じる。面会に訪ねても来なかった彼女にいだいていた愛津の期待は、図々しかったのか。本当にえれんと深い関係だったのか。…………


「愛津ちゃんとえみるちゃんは、今時の子にしては偉いね」


 屈んで愛津に目の高さを合わせまま、月村が口調を変えた。


「月村さんだって、ほぼ同世代じゃないですか」

「私から見るに、二人とも織葉ちゃんを好きで、愛津ちゃんが一枚うわてだった。でも、えみるちゃんとは良いお友達。そういうことでしょ?神倉さんより我慢強いね、二人とも」


 何も勘繰らなかった頃であれば、愛津は月村の想像力を前にして、呆気に取られていたかも知れない。

 しかし彼女の見解は、誤っている部分の方が少ない。

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