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ジェンダー・ギャップ革命

第8章 報復の権利



「私は、少し大切にしてもらっただけです。織葉さんにとって、きっと私は、将来まで考えられるほどの存在じゃなくて……」

「愛津ちゃん、謙虚なのね」

「連絡も伝言も、くれなかったんですよ。それって、やっぱり関係が明るみに出るまでの、期限付きということだったんだと思います」


 そう考えておけば、諦めがつく。

 愛津かえれん、織葉はどちらかしか選べない。愛津が彼女の立場でも、同じ結論に至っただろう。


「私には娘がいてね、愛津ちゃん」


 月村が、にわかに彼女自身の話を始めた。

 誰もが知る円満な家庭を築いた彼女は、私服警官時代を経て、現職に就いた。万引き犯やモラルに反した囚人達と関わる中で、彼女は、人の抱える多様な事情を目の当たりにしてきたという。角度を変えて見さえすれば、誰もが善にも悪にもなる。一個人に複数の事実が内在していることさえある、というのが彼女の持論だ。


「愛津ちゃんは可愛くて、しっかりしてる。ただ、それだけじゃないでしょ。でも織葉ちゃんや神倉さんは、普段、愛津ちゃんのそういうところを気に入っているんだと思う。見たい側面だけを見て、だけど助けられる時は助けたかったんじゃないかな。愛津ちゃんが何を信じたいかも、同じことじゃない?」

「月村さんは、どこまで、知ってるんですか……」

「愛津ちゃんのご両親じゃ、愛津ちゃんのためになれない……とは、聞いている。あと、大越湊斗の証言が、嘘じゃないこと」

「……っ?!」


 月村は、それから黙秘を通した。

 愛津も彼女から聞き出すべきではないと悟った。


 消灯時間が近付くと、愛津は月村を見送った。



 久し振りによく眠れた。

 少し清々しい気分で朝を迎えた愛津を、出所の準備を手伝う名目で、えみるが訪ねてきた。忘れ物の確認を始めてまもなく、他の看守が立ち入ってきた。

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