テキストサイズ

ジェンダー・ギャップ革命

第8章 報復の権利


* * * * * *

 えれんが愛津を迎えに向かったあと、織葉は収容所から電話を受けた。その際、業務連絡に含まれていた今日午前中の公開処刑者リストに、聞き馴染んだ名前があった。

 罪状は、処罰偽装。

 ありあに、ある時期から生傷が増えなくなった。そればかりか回復に向かった彼女と、担当のえみるの間に不正が生じている可能性を疑った職員が、彼女らを張り込んだところ、思いがけない真相に結びついたという。


「英真ちゃん、しづやちゃん、ここ任せられる?」

「出かけるんですか」

「今の電話……えみるん、何かやらかしたんですか」


 えみるの友人である二人に、織葉は愛津が収容された夜から今に至るまでを話した。

 英真もしづやも、珍しいほど言葉少なだ。たまに相槌を打つ彼女らの表情だけが読みやすく、余計に織葉は胸が痛む。

 えみる達に罪はない。原因は織葉だ。えみるに無理難題を押しつけて、彼女の好意と傷心を利用した。


 織葉がノブを握った時、英真がすっくと腰を上げた。

 苦渋を抑えた華やかな顔は、少し目を充血させているだけで、不可解な説得力がある。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ