ジェンダー・ギャップ革命
第8章 報復の権利
「えみるんは、織葉さんと話したことをきっと隠します。自分の判断だと言い張ると思います。だから、行かないで下さい」
「そんなことさせられないよ」
「私も英真に同意します。織葉さんは、神倉さんの代弁者です。いくら愛津ちゃんが冤罪でも、織葉さんが不正の発端だなんて明るみに出たら、「清愛の輪」を支持してくれている人達の気持ちがどうなるか……。愛津ちゃんの処罰は止められました。それで十分じゃないですか」
「えみるちゃんを見捨てて、嘘をつき通すなんて……」
愛津を救いたい一心だった。あの夜、織葉の判断力は、ショックのあまり鈍っていた。
贖罪すべきは自分だ。愛津が解放されたところで、どうせ織葉は自由になれない。
女達が理不尽に何かを諦めたり、夢を絶たねばならなかったりしなくて済む世界を、志していた。よそゆきの洋服一着を買うのも躊躇っていた愛津のような女を、増やしたくなかった。
だが身近な人間一人を守れないで、不特定多数の女達は救えない。
「お義母様の築いてきたものは、この程度で崩れない。不正を隠してまで私は今の立場にいたくないし、支持してくれている人達にも申し訳ない。愛津ちゃんは冤罪だった。罰を受けさせないよう頼んだこと、私は悪いと思ってないから」
えみる達の刑の執行時間には、最短で移動しても間に合わない。
英真達の抗議を振り切って、事務所を出ると、織葉は階段を降りながら、月村の連絡先を探した。