テキストサイズ

ジェンダー・ギャップ革命

第8章 報復の権利



 …──別れた妻は、ギャラ飲みに出ていた女性だった。ひと目惚れだった。彼女の生き様を近くで見たいと思い、プロポーズを決めた。ああいうか弱そうな人間ほど、驚くことをしてくれる。見込んだ通り、えれんちゃんは私より立派になってくれたからなぁ。


 ありあに強い印象を残した男は、大越湊斗に限らない。
 誰もが事情を抱えていた。誰もが人間らしく悩んで、自身の最善を選んでは、成功と過ちを重ねながら、必死に生きていた。


 研究所へ移送された大越は、精神を壊しても尚、赤子を産ませる家畜として飼育されている。ありあの担当した中には、この刑場で生死を彷徨って、精神病棟に送られた男達もいる。

 彼らの受難は、他人事ではなかった。

 今まさにありあと共に肉体を壊されようとしていたえみるに、駆けつけてきた月村が命じた。


「貴女が皇ありあの処刑を行うこと。いつも通りに、……急だけど出来るよね?」


 確かにそれは、「いつも通り」の仕事だ。えみるはここで女達を処刑して、何人も精神病棟に送ってきた。その対象が、今回はありあというだけのことだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ