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ジェンダー・ギャップ革命

第2章 唾を吐く貧民



 …──素敵でした。お話、共感しました。


 何か伝えなければと焦るほど、あらゆる賛美も織葉の前では色褪せて、声に出すのが憚られる。

 愛津が挙動不審に息を吸ったり吐いたりを繰り返していると、すぐ目の前の玲瓏な顔がほころんだ。


「緊張してます?お互い様です、肩の力抜きましょう」

「ッッ!?!?」


 愛津の肩に、彼女の指がやおら乗った。じんとした。指先の重みまで違う。


「神倉さん、でも、緊張なんて……新参者、相手に……?」


 それだけ絞り出すのがやっとだった。

 見た感じ愛津よりやや年長というだけの織葉は、マイクを握っていた時に比べて、近くで見ると感情豊かな印象だった。さりとて政界の人間に見られがちな媚びたいやらしさがなく、彼女は愛津に対しても、初めて出逢った友人と大差ないような接し方をする。


「お名前は?」

「双葉、愛津です」

「そう、愛津ちゃんね。そんな可愛い目してて、緊張しない方が難しいです」

「はゃ!?」


 数年振りに、愛津の喉から変な声が出た。今思い起こしても、あの日「清愛の輪」に遭遇した時、愛津の頭からは久しく金にまつわる憂慮が抜け落ちていた。あれだけ胸をときめかせたのも、希望に鳥肌を立てたのも、久し振りだった。

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