ジェンダー・ギャップ革命
第2章 唾を吐く貧民
織葉と引けをとらず注目を集めていたえれんこそ、「清愛の輪」の中心核だと聞かされた後日、愛津は彼女の事務所の門を叩いた。
当時まだ有志の社会団体でしかなかった彼女らは、愛津から見て眩しかった。
選挙に出るだけが、政界に入る手段ではない。そもそも愛津は、政治に無関心で、内情にも明るくなかった。友人からそうした指摘もあって、愛津はえれんの指南を得ようと考えたのだ。
その秋、えれんが議員選に当選した。
当時大学四回生で、動画配信の活動もしていたえみるが車乗運動員を務めたのもあって、固守的な評論家達は「清愛の輪」を好き勝手に叩いた一方、若い世代の投票率は近年で最高数値に上ったらしい。愛津も選挙期間中は「清愛の輪」に専念して、アルバイトを休んででも雑用を引き受けた。
神経が尖りがちになる大事な時期も、えれんは愛津の当初の野心を心に留めていてくれた。秘書時代に学んだことや、支配側に立つ人間としての彼女の考えを、いつか愛津の役に立つだろうと言って話してくれた。
開票結果が出てすぐに、愛津はえれんの呼び出しを受けた。
「愛津ちゃんを正式に雇うことは出来る?」
それは、思ってもみなかった申し出だった。