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ジェンダー・ギャップ革命

第8章 報復の権利


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 愛津が釈放された朝の顛末を、英真としづやが聞かされたのは、翌日だった。

 えみるは有給休暇を願い出た。昔、夜の世界で過不及なく有名だったありあの処刑は、一定数の者達にとって、恰好の見せ物になったと聞くが、刑場でえみるも逆上したという男達はのちに投獄、彼らの撮った動画や写真も月村達が破棄したらしい。


「神倉さんの理想は、しづやと私の目指しているものに近い。それってね、ノーリスクのノーリターンでは、難しいと思うんだ。女性優位の社会作りだけじゃない、個人の些細な夢だって、そう。何かを得たいなら、何かは諦めるべきなんだよ」

「英真は、割り切ってるよね。私は、まだ堪えてる。えみるんと愛津ちゃんだって、当事者だし。織葉さんも、話に触れないだけ余計に」

「えみるん達のせいだったのかな。それは、私だって辛いよ。でも、ありあちゃんは異性愛者で、収容所からすれば、都合の良い処刑の理由が付いただけなんじゃないかって。ありあちゃんみたいな職員は、施設としては不都合だった」


 かくいう英真も、身近な友人の落命は、夢見の良いものではなかった。

 だが、玲亜との友情に修復の見込みを失くした時、悟った。英真達の理想が現実に近づくほど、男との共存に苦を感じてこなかったような女とは、相容れなくなっていく。いつまでも彼女らと親しみ合っていたいと願っても、余計に傷付くだけなのだ。


 そうする内に、英真はしづやと、祖父母と母親の待つ実家の前にいた。

 生まれ育った住まいを実家と呼ぶならここはそれに該当しないが、往国茂樹の屋敷は、今や英真には他人の家も同然だ。

 先に到着していた佐々木ら使用人達が、英真としづやを出迎えた。
 正月飾りがめでたく彩る軒先を越えて居間に入ると、祖父母、そして母親が、今日の主役に対する風な顔を向けてきた。

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