ジェンダー・ギャップ革命
第8章 報復の権利
「待ってたわよ、しづやちゃん。久し振り。屋敷にいた頃、何度か見かけていたの、知っていた?」
「お久し振りです、お義母様。あの頃は、ちゃんとご挨拶出来なくて……。あ、お土産、良かったら」
「そんなに気遣ってくれなくても……有り難う、聞いていた通りの美人さん!私は、英真の祖母です。初めまして」
「わしは祖父です」
英真との挨拶はそこそこに、祖父母達はしづやにひと頻りの質問をして、そして褒めちぎった。英真が心に決めた以上、彼女らは孫の、或いは娘の配偶者に、とりたてて求める家柄も経歴も設けていない。
「本当に有り難う、しづやちゃん。英真は派手好きで自由奔放なところがあるから、疲れていない?もししづやちゃんに出逢えていなければ、娘は未だ独り身だったかも知れない」
「こら、独り身だって良いじゃない。今は色んな生き方があるのよ。でもね、おばあちゃんも、英真が幸せそうで何より。英治は残念なことになって……新年を祝うのも今年は控える、と、あの子のことは心配だけれど、英真としづやちゃんのお陰で私達、めでたいわ」
「英治にはわしらも協力してやると言っていたのに、合わせる顔がない。あいつは今頃どうしているか……」
暗い雨雲が覆ったように、祖父母達に沈痛な面持ちが浮かんだ。
この正月、英治は一人で過ごすと言っていた。彼には同じ屋根の下に暮らす家政婦もいない。英真達が浮かれている今この時も、人の良いあの兄は、先立った恋人を偲んでいるのか。