ジェンダー・ギャップ革命
第8章 報復の権利
「愛したのは、愛津ちゃんが最初で最後。それは、ずっと変わらない」
「織葉さん、あのっ」
「今日は会えて嬉しかった」
「…………」
愛津は、扉に背を預けて織葉に向き合う。
数日前、愛津は織葉と最後の時間を持った。秘密裏に訪ねてきた彼女は愛津に、えみる達のことで罪悪感を持つなと説明して、別れ話を切り出した。
えれんの孤独は根深い。本人でさえどうにも出来ない、不安定な部分がある。
二度と恐怖を強いたくないと言った彼女の思いを、愛津は受け入れるしかなかった。
あの夜、愛津は織葉の抱擁の中にいた。連れ去りたい、連れ去って欲しいと願いながら、彼女の目指すところがえれんと同じである以上、愛津は彼女の最上位にはなれないのだと悟った。
二度と触れられないはずだった。だのに織葉は、あの夜と同じ抱擁をした。
胸と胸とが押し合う。彼女の首筋に、きっと愛津の息がかかっている。懐かしい、少し前なら当たり前に嗅いでいたコンディショナーの残り香が、愛津を満たしていく。
「あんな話しておいて、ごめんね。愛津ちゃんを忘れられなくて、今日だってこっそり見たりして、でも見てるのが辛くて……好きで、ごめん……」
「いいえ、……私も、そんな感じだったから、……それに私も、織葉さんのことは駆け落ちしたいくらい大好きだけど、命懸けになれる覚悟は……また別っていうか……」
何故、自由な世界にいて、こうも不自由なのだろう。
そんな愛津ちゃんが好き、という織葉のささめきを至近に受けた。