ジェンダー・ギャップ革命
第8章 報復の権利
「織葉も、えみるちゃんを慰めたでしょう?」
「現場まで来て、説明してくれました。でも、こうなったのは私の判断です。殺したのも、です。ありあちゃんは、呪わないと言ってくれた……、呪ってくれた方がマシなのに!!」
生臭いような鉄錆の味は、舐めたこともないものだった。死の味がした。
えみるは肉体だけ残して、あの時、ありあの道連れになったのかも知れない。むごたらしい最期を経て天に昇った彼女の本音を、えみるにはもう確かめられない。彼女と違って、えみるの心魂は地獄に落ちた。
「えみるちゃんは、悪く、ない」
「法ではそうでも、自然は許してくれません」
「えみるちゃん達の世代だと、考えられないかも知れないけれど。昔は、ありあちゃんのような異性愛者の人達が同じ女を傷付けることも、たくさんあった。性的少数者達を腫れ物のように見たり、心ない言葉を投げたり、そうでなくても他人の結婚や出産に口出したりして、本人の気持ちも考えられない人達が、当たり前にいたの」
「それは、ありあちゃんじゃありません……」
もちろんだ、と、えれんは頷いた。
社会が女性優位になった今も尚、男を信頼している類の女達がいる。ありあの処刑は、そうした彼女達への牽制だった。「清愛の輪」は男を害悪としているが、彼らを立てたり信頼したりする女も同等だ。
「ありあちゃんじゃなくて、も、良かった……」
「彼女じゃなければ、えみるちゃんは罪悪感を覚えなかった?」
「──……」