ジェンダー・ギャップ革命
第9章 安息を望むには苦しみ過ぎた
愛津の謹慎が解けて、えみるが事務所に異動してまもなく、英真としづやが何者かに尾けられていると懸念し出した。
それだけではない。
窓にフラッシュらしいものが光っただの、郵便ポストが開かれていただの、住所も突き止められているという。別邸なら、まだ納得がいく。例のカルチャースクールの生徒であれば、全員が所在を知っている。だが謎の影が嗅ぎ回っているのは、彼女らの自宅近辺だ。
「お父さんは貧乏になって、お母さんに慰謝料も請求されてる。探偵や使用人を雇える余裕は、ないと思うんだ。人望も一気に失くしちゃったから、動かせる人はいないだろうし」
「と言っても、英真ちゃんのとこ、親子揃ってお父さんと縁切ったんでしょ。家出してから連絡も取ってないなら、尚更。娘の様子が気になったとか……」
「一方的に縁切られてまでネチネチ探り入れてくるようなお父さん、現実的にいると思います?」
「人による……かな、ねぇ?お母義様……」
「人に、よる、わね……」
「歯切れ悪くないですか?」
すかさずしづやが話に割り込んだのは、躊躇いがちに愛津に目を遣る織葉とえれんが不自然だったからだろう。
愛津の両親を知る彼女らにしてみれば、おそらく英真の推理に頷き難かったのだ。