ジェンダー・ギャップ革命
第9章 安息を望むには苦しみ過ぎた
それから、英真達は業務を再開した。
愛津も資料に目を戻す。すると、えみるが小声で呼びかけてきた。
「英真ちゃん達につきまとってるの、よその団体かも知れない」
「どうしてっ?」
「この間、スーツの女性に声をかけられたの。「清愛の輪」の業務や予算の内情や、役員の、特に神倉さんのプライベートまで聞きたがってきて……」
「記者?」
「だったら直接オファー取るでしょ。私達を良く思わないどこかの隠者が、探りを入れてきたんだと思う。そのあと、私も尾けられたから」
えみるは、英真達ほど気味悪がっていない様子だ。しかし彼女の憶測が当たっていれば、愛津にとっても他人事ではない。
もっとも、「清愛の輪」やえれんから、粗は出てこないだろう。内輪の行事や飲み会は、彼女が自腹を切って予算を組んでいて、世間を面白がらせる類のスキャンダルを起こした役員もいない。表に出てまずいのは、彼女が愛津を投獄した顛末くらいだ。