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ジェンダー・ギャップ革命

第9章 安息を望むには苦しみ過ぎた



「お義母様が正しい、そう皆に確信させるんだ。そういう世の中にして、えみるちゃんを守ろう。あの時はそうするしかなかったって、思ってもらおう」

「私が、往国茂樹みたいにならないとは限らないわよ?」

「失言なんかしないでしょ。私も英真ちゃんみたいにならない。お義母様にだけ背負わせない」

「えみるちゃんのことは、織葉のせいじゃない。私が感情に走ったのが始まりで……」


 何度、この話はやめようと、えれんに言ったか。

 愛津の投獄は事故だった。えれんが彼女に悋気めいたものを向けたのも、織葉が彼女を救いたがったのも、人智を超えた力が働いていてもおかしくなかったくらいには、避けようがなかった。


「今日は、楽しかった。えみるちゃんも、少しずつ前みたいな顔見せてくれるようになってきたし、お義母様のお洋服も見付かって」

「私も楽しかった。……そうよね。昔に戻してはいけない。あんな、男を……低能な下等動物達を、やっとここまで排除出来た。綺麗事なんかなくて良い、私達はそれだけ苦しんだもの」


 何を願うか。

 欲しいのは、きっと変わらない日常だ。えれんがいて、愛津がいて、闇がえみるを引きずり下ろしたりしない日常。

 目まぐるしく何かが変わっていく中で、持続ほど、望みとして大きなものはない。愛津を愛している。見守ることでしか彼女への愛情を消化出来ないままとしても、織葉は変わらないものを願う。何も起きず壊れない日常が、続けば良い。もし不幸や不満があれば、きっとこうは望めない。

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