ジェンダー・ギャップ革命
第9章 安息を望むには苦しみ過ぎた
「どう見たって似てるよ、神倉さんと織葉さん。神倉さんは清楚系で気付きにくいだけで、私は火遊びしたさの綱渡りだと思っていたよ」
「英真ちゃん、ずっと言ってるよね。愛津ちゃんは、どうだと思う?神倉さんや織葉さんを陥れたい人達が、陰謀している可能性は?」
「私も……ニュースの通りだと、思う……」
「愛津ちゃんとえみるんには、つらいと思う。だからって、私は神倉さん達が非道徳的だとは、頭ごなしに思わない。個人の勝手でしょ。ましてあの二人は独身だし、こんなに騒がれる筋合いはない。辞職しろだの捕まれだの言ってる人達は、法律が変わって、近親間の恋愛が一般化しても、同じように非難するかな」
人間は、他者の影響を受けやすい。えれんの売色ひとつにしても、語り手が悲劇的に聞かせれば同情し、スキャンダラスに聞かせれば、不潔な印象を持つ。
ここ数日、苦情のメールや電話はひっきりなしに続いている。世界中が敵にでもなった風だ。
ピーーーーーーーー──…
『只今、留守にしております。ピーと鳴ったら、ご用件を──…」
えみるが電話機に飛びついて、受話器を上げた。何かに弾かれたように動いた彼女は、発信主の声も確かめないで、受話器を戻した。