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ジェンダー・ギャップ革命

第9章 安息を望むには苦しみ過ぎた








 えれんの記者会見は、愛津の想像とはかけ離れていた。

 見るからに感情的になった記者達も、相次いだ。それほど彼女の受け答えや言動は、独尊的で、自己中心的だった。


『前良人との結婚は、生涯、私の汚点です。何故、飢えて死ぬことを選ばなかったか、今も後悔しかありません。当時は身籠もっていたので、出産まで命を絶てず、仕方なく生き延びてしまいました。仕方なく生き延びていたある時、娘を──…織葉を、私が望んでもついに得られなかったものに育てていこうと、思いつきました』

『では、大越氏も、神倉さんに金銭を渡して肉体交渉していた男性の一人ということですね?』

『妊娠されていた時点で、織葉さんを、その……愛人のような立場にしたかったと?』

『良心の呵責はなかったんですか?あのような政策をなさってきた神倉さんには愚問でしょうが、母性は芽生えませんでしたか?母親として恥ずかしいとは?』

『愛情は、ありました。どの母親にも負けていないと、胸を張って申し上げられます。ただ、娘を自分好みに育てて、良人を始めとする取引相手に傷付けられた肉体を慰めて欲しいと望み、実行したことは否定しません。容姿や思考、私に対する感情も、織葉は私の理想そのものになりました』


 記者の群れの数ヵ所から、神経質な悲鳴が上がった。

 今日の会見を先読みするようにして、今しがた、愛津が織葉に聞かされた通りだ。ただし、彼女もえれんの胸の内までは知らなかったようだった。

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