テキストサイズ

ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪



 壊れた信頼関係は、家族間でも元に戻らない。それこそ愛津は身をもって痛感したが、夢は見たい。

 えれんが好きだ。

 彼女に救われてきたのは、愛津に限らないはずだ。今は、ただ集団性同調バイアスが働いて、大勢が彼女を攻撃対象としているだけだ。


 それから愛津は家政婦らとも交流しながら、食事を終えた。

 会話は尽きない。

 愛津はえれんに話をせがんで、愛津自身も彼女の質問に答えていく。

 とりわけえれんが関心を寄せたのは、疎遠になったひろか達の話題だ。


 旧友達は多忙を理由に、愛津を誘わなくなっていた。そのくせ各自の都合が合えば、彼女らは会って話していることもある様子だ。

 昔、愛津は彼女達が眩しかった。平均的な家庭に生まれ育った彼女達は、愛津が諦めなければいけなかったことを当然のように経験して、当然、学校にも卒業までいた。

 彼女らに苦悩はないと思っていた。会う度、愛津は自身の恵まれなさを思い知っていた。それでも皆を好きだった。

 だが、彼女達は違った。

 中でもひろかは、かつての少子化対策における政策の被害者だ。
 子育て支援金を得るために、両家の親達の言いなりになった。平均的な家庭に生まれ育ったはずのひろかにとって、いつしか、愛津の方が目の毒になっていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ