ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
「あ……」
雑踏の流れる方角へ向かっていると、ある一点を見上げたえみるが、ピンク色のアイカラーで囲った目を輝かせた。
「あのイラストレーターさん、展示やってるんだ。可愛ーい」
そこには、彼女の所持品にも度々見かけるウサギのキャラクターの描かれた看板があった。複数のウサギは皆、同じ顔をしていて、かぶり物やドレスで個々の個性を出している。彼女曰く、SNSであのウサギばかり描いて発信していた無名のイラストレーターが、話題を呼んで、いつの間にか人気を得ていたという。
「見る?」
「良いですか?見たいです」
看板の出た百貨店に入って、織葉達が展示会場へ向かうためのエレベーターを待っていた時、斜め後方にいた女達がえれんの名前を口にした。
「◯◯テレビに襲撃?神倉えれんが?」
「なりすましか同姓同名じゃないの?」
「あの神倉だってば、ほら……」
織葉とえみるは、ほぼ同時にスマートフォンを引っ張り出した。
その名前を検索にかけるまでもなく、インターネットのトップ画面に、えれんが市内のテレビ局に凶器を持って立てこもったという記事が出た。