ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
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二時間前、えれんから不可解な文面が、愛津のスマートフォンに届いた。
英真達にそれを転送して、彼女のカルチャースクール令嬢達の協力もあって、えれんの行方は突き止められたが、ことが起きたあとだった。
問題のテレビ局の入ったビルは、報道関係者らや警官達が包囲していた。
愛津は、裏口から局内へ入った。ネットニュースを頼りにして、えれんが社員達を連れて入ったという現場に到ると、そこには記事の通りの光景があった。
壁際に沿って一列になった若い社員らは、縄で縛られていた。女も男も関係なく、えれんが彼らに小型ナイフを突きつけて、恫喝している。愛津に気付くと、彼女は刹那、動揺を見せて、帰って、と呟いた。
「何してるんですか!」
「愛津ちゃん。私は、「清愛の輪」と織葉を頼むとだけ言ったはずよ」
「この人達を解放して、謝って下さい」
「謝るのは世間よ。私を悪く言うだけならともかく、実の娘まで誹謗中傷の的にされた。親として目を瞑れと?」
それから、えれんは話し始めた。
狙うのは、それなりに規模のある情報発信地あれば、どこでも構わなかったらしい。
彼女は耐え兼ねていた。自分が男達に身体を売っていた過去は、どう広められても構わない。大衆は、事実の有無に関わらず、一度悪者と認識した人間を、好奇心の捌け口にする。だが彼らは、織葉まで見世物にした。