ジェンダー・ギャップ革命
第2章 唾を吐く貧民
「えれん久し振り。ご機嫌いかが?テレビでしょっちゅう貴女を見てるわ、織葉ちゃんも。忙しいんでしょう、貴女達もやしになっていないか心配だったのよ」
「なれるならなりたいわ。私達、人気だから。しょっちゅうお嬢さん達から食事に誘われるの。ね?えみるちゃん」
「ですよぉ。たまに断られますけど。井原さんからも言って下さいよ、神倉さんいつ寝てるんですか?って」
えれん達のやりとりから察するに、今日の晩餐は、いつかの埋め合わせらしい。
「泰子はどうしているかしら。あの子がLBGTQ団体を支援したのは予想外だったわ、同じ議員でも貴女達は揉めないでしょう。織葉ちゃんが貴女の方に付いているのが、その証拠かな。また四人で飲みに行きたいわ、和奈とも最近は会っていないし」
「そっか。若松泰子(わかまつやすこ)さん、織葉さんのお母様でしたもんね。中学生からの仲良しなんて、素敵です」
「いつも一緒の五人グループだったのよ。もう四人でしか集まれないけれど、会えば、気持ちは五人でいるつもり。ね、えれん」
井原に目で頷いたえれんの顔に、感傷的な影が落ちた。心ない誹謗中傷も当てつけ同然の苦情も冷静にとりあう彼女にしては、珍しい。旧友の朗らかさに合わせ難いのが伝わるほど、動揺している。
慌てて話題を切り上げた井原は、ミニチュアの花を連想する小鉢を並べた盆を配膳すると、氷上を滑るように退室した。