ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
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川名は、神倉えれんに賛同していた。選挙で票を入れるほどの熱量ではなかったが、男に経済的責任を押しつけて、出世や結婚の有無で個人の価値を測るような先人達より、彼女の観念は好感が持てた。
ただ、川名には、動画配信者として脚光を浴びるという志があった。
人間は、多くが好奇心の亡者だ。社会の動きに興味はなくても、「善生団」というそれらしい団体を立ち上げて、世の中の闇や不正を道化た姿勢で発信し続けた川名に、視聴者達は食いついた。
長沼と協力し出したのも、売名目的に他ならない。
彼は著名だ。代償として、彼に不利な企画は出せなくなったが、今年は往国茂樹とまで面識を持てた。川名にとって、彼は多少の恩も返すべき相手になった。
長沼の機嫌をとるために、神倉えれんの粗を探した。彼女の秘密を暴いてからは、自身のチャンネルで扱いもせず、彼らの指示に従った。
収益という目に見える成果は出たが、たった今、川名は手錠にかけられた。月村逸花と名乗る役員と彼女の部下達が、例のごとく寄り合っていた長沼、往国、そして川名と仲間達に、逮捕状を突きつけたのだ。