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ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪








 警官達に紛れて駆けつけてきたえみるも手伝って、人質達の縄が外れた。

 愛津はえれんに自身のウエストリボンを渡して、彼女が織葉を応急処置する側にいた。


「こんなことになるなら、貴女や愛津ちゃんを連れてどこかへ逃げれば良かった……何でっ……運の悪さには自身があったのに、私が犠牲になれなかったの……!」

「お母様の力じゃ、そんなに深くないってば……他人を刺せば言い訳出来ないけど、私なら、誤魔化しとく、から……」

「織葉さん、……神倉さんを、止められ、なくて……」


 ウエストリボンが止血の役に立ったのは、最初だけだ。二本重ねても数分と持ちこたえず、こぼれたジュースを吸った布巾同然になった。もとより裂傷部こそ狭い範囲だったが、織葉がえれんと女の間に割って入った瞬間、愛津は、あり得ないほど深く切っ先が沈んだのを見た。


「泣きやんでよ、愛津、ちゃん……私達が泣かせたみたいじゃない……」


 冗談を気取る織葉の声が、愛津から真新しい涙を誘う。

 生きることだけ考えてきた、だがもしこれが致命傷になっても無念はない、と織葉は続けた。

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