ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
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えれんは、懲役四年の有罪判決を受けた。
与党議員の立てこもり事件は、犯人である神倉えれんの目論見通り、国内全土を震撼させた。
十もの他人は駒同然にもてあそんだのに、娘の命は重く見た。そんな人間が行政に携わっていたと思うと身の毛がよだつ、と世間は騒いだ。
対して弁護側は、一つの例えを引き合いに出した。本件のえれんを残酷非道と判断するなら、大多数の人間も、彼女と同じだ。何故なら大規模な事故があったとする、死傷者に親しい人間が含まれていたか、また、著名な人物が含まれていたかでも、感情は違ってくるだろう。
現場にいた数人が、穏便な罰を願い出たのもあって、四年の自由刑は、罪状にしては軽い。
だが、世間はえれんをいっそう憎んだ。特に、人質に取られていた女の一人が証言した、彼女の母性を仄めかした発言は、一部の母親達を憤らせた。実の娘で性欲を発散していた女に、母親を名乗る資格はない。また、彼女への不信感に便乗した市民達は、彼女は独裁者だったと言って、批判した。
「人間って、学習しないね」
えれんの立てこもり事件も、一面記事から徐々に外れていった頃、探してようやく見付かる程度の彼女の話題を目で追っていた英真が呟いた。